FSIGMA海外移住コンサルタントの山本です!今回は、富裕層の方々、特に海外移住をしてFIRE(早期リタイア)を実現された方々が実際に活用している「海外プライベートバンク(PB)」の実態について、ご紹介したいと思います。
海外移住と資産運用、その裏で見えてきた“成功する富裕層の共通点”
私はこれまで、シンガポールやマレーシア、ドバイを中心に、海外移住を希望される方々のサポートを行ってきました。その中で、FIRE(Financial Independence, Retire Early=早期リタイア)を達成した方や、事業売却後のバイアウト組など、さまざまな形で資産を築いた富裕層の方々と数多く接してきました。
私自身もマレーシアに移住しており、そうした方々は身近な存在です。ゴルフをご一緒するような仲間の中にも、何億円もの資産を運用している方が少なくありません。
そういった方々と日々接するなかで強く感じるのは、「海外移住を機に、資産運用の軸をプライベートバンク(Private Bank:PB)に切り替える人が非常に多い」ということです。もはやPBの利用は、富裕層の中では「特別な選択」ではなく、「当然の戦略」になっているように感じます。
ではなぜ、彼らは海外プライベートバンクを選ぶのでしょうか?
そして、日本の金融サービスと比べて、何がそんなに違うのでしょうか?
本記事では、海外移住後の資産運用におけるPB活用の実態と、そのメリット・構造・税務面の優位性について、私の実体験を交えて解説していきます。
プライベートバンクとは

プライベートバンク(Private Bank)とは、主に一定以上の資産を持つ富裕層を対象に、オーダーメイド型の資産管理サービスを提供する金融機関です。日本で一般的な都市銀行やネット銀行とは異なり、単に預金や融資を行うだけでなく、投資・税務・資産承継・相続・グローバル移住など、人生全体に関わる高度な財務サポートを一括して提供するのが特徴です。
その中心となるのが、「プライベートバンカー」と呼ばれる専任担当者の存在です。彼らはまさに“金融のコンシェルジュ”とも言える存在で、顧客一人ひとりの資産背景やライフスタイルに応じて、投資戦略や信託、保険、不動産、法人スキームまで含めた包括的な提案と実行支援を行います。
プライベートバンクの起源は、18〜19世紀のスイスの富裕層向け銀行にさかのぼります。かつては「秘密主義」と「匿名性」が特徴で、口座情報は厳重に守られ、外部に開示されることはほとんどありませんでした。しかし、近年ではCRS(共通報告基準)による国際的な口座情報共有制度が広まり、秘匿性の高い“伝統的プライベートバンク”は徐々に姿を消しつつあります。
現在、アジアにおいてはシンガポールがプライベートバンキングの中心地として発展を続けており、世界中の富裕層がその柔軟性と透明性、税制面での有利さに惹かれています。
一方で、日本国内にもいくつかのプライベートバンクは存在しますが、金融規制が非常に厳しく、運用の自由度が低いうえに手数料も高めであるとされ、本格的な資産運用を求める層はシンガポールやスイスに口座を開設するケースが増えています。
富裕層にとってのプライベートバンクは、ただの銀行口座ではなく、資産を「守る・増やす・引き継ぐ」ための戦略的な拠点とも言える存在なのです。
富裕層がプライベートバンクを使う理由
なぜ彼らは「普通の証券口座」では満足しないのか?
資産を持つ人がすべてプライベートバンクを利用しているわけではありません。しかし、一定以上の資産規模になった富裕層の多くがプライベートバンクに切り替える理由には、明確な“構造的メリット”があります。
まず第一に、投資の選択肢と柔軟性が圧倒的に広がることです。通常の証券口座では購入できない、**機関投資家向けの専用ファンドや未公開案件、オルタナティブ投資(ヘッジファンド・PE・不動産投資など)**にもアクセスでき、分散効果と利回りの両立が可能になります。
さらに、PBならではの強みとして注目されているのが、資産を担保にしたレバレッジ戦略=ロンバートローンの活用です。これは、保有する債券やファンドなどを担保にして資金を借り入れ、追加で投資に充てることができる仕組みです。
しかも、債券であれば担保掛目(LTV)が80〜90%に設定されることもあり、借入金利も年1〜2%台と非常に低利。つまり、「資産を売らずに使う」運用戦略が可能となり、運用効率が一気に上がります。

また、日本の金融制度では、証券担保ローンの自由度が非常に低く、担保掛目が厳しい上に、金利も高めに設定されていることが一般的です。そのため、国内の証券口座で大規模かつ柔軟な運用を実行するのは難しく、シンガポールやスイスのPBに口座を移す富裕層が増えているのが実情です。
加えて、税務・相続・資産保護の観点でもPBは非常に優れています。たとえば、マレーシアなどに移住することで、PBを通じた海外運用にかかるキャピタルゲイン税や配当課税がゼロになることもあります。これは、日本居住のままでは到底得られない、「制度によるリターン」の最たる例です。
つまり、プライベートバンクは単なる“高級な銀行”ではなく、富裕層が「資産を守りながら、賢く増やしていく」ために設計された、戦略的なプラットフォームなのです。
プライベートバンクで使える「ロンバートローン」とは?
プライベートバンクを活用する富裕層にとって、大きな魅力のひとつが「ロンバートローン(Lombard Loan)」です。
これは、自らが保有する株式や債券、ファンドなどの有価証券を担保にして、低金利で融資を受けることができる仕組みです。資産を売却することなく、そのまま担保にして再び投資に回せるため、“資産を寝かせず、働かせる”ことができる戦略的な金融ツールです。
たとえば1億円分の債券を保有していれば、最大で約8,000〜9,000万円の融資枠が与えられ、その資金を元手に再び投資を行うことが可能です。もちろんリスク管理は重要ですが、適切な設計をすれば、非常に効率的な資産運用が実現します。
日本の証券担保ローンとは何が違うのか?
日本にも似た仕組みとして「証券担保ローン」が存在しますが、実際に活用できる場面は極めて限定的です。
- 融資資金の用途が制限されている
多くの金融機関では、融資資金を「投資目的」で使うことができず、あくまで生活費や納税資金などにしか使えないとされています。つまり、肝心の“投資再利用”ができないのです。 - 金利が高すぎる
年利3〜5%以上が一般的であり、レバレッジをかけるにはリスクとリターンが見合わないケースが多発します。 - 担保掛目(LTV)が低すぎる
債券であっても50〜60%、株式では30%程度といった水準が一般的であり、思うように資金を引き出せず、レバレッジをかけるどころか流動性の確保すら難しいことがあります。
このような条件では、実質的に日本の証券担保ローンは「世界水準で見ると極めて使いづらい」仕組みだと言わざるを得ません。
海外PBでは“信用”が資産になる
一方、シンガポールやスイスといったプライベートバンク先進国では、
- 低金利(年1〜2%台)
- 高LTV(債券で80〜90%)
- 用途自由(再投資・不動産・法人資金など)
という条件で資金を調達できるため、「投資ポジションを維持しながら、新たな投資機会を逃さない」という高度な戦略が可能になります。
資産を持つ人が、資産をさらに活かす。この資金の流動性と機動力こそが、海外PBの強みです。
なぜ富裕層は債券で運用するのか?

資産運用といえば「株式」が注目されがちですが、実際に多くの富裕層が中核として選んでいるのは“債券”です。その理由には、以下のような明確なメリットがあります。
1. 債券は「株式よりも安定した資産」
債券(Bonds)とは、国や企業が発行する「借金証書」のようなもので、満期まで保有すれば元本が返済される仕組みです。株式と異なり、価格変動が比較的小さく、利回りが安定しているため、富裕層にとっては“守りながら増やす”資産形成手段として好まれます。
また、株式市場が大きく変動したとしても、債券は比較的リスクの影響を受けにくく、キャッシュフローも安定しています。
2. 分散投資で毎月利息が入る仕組みも構築可能
債券は、半年に1回などの頻度で「クーポン」と呼ばれる利息が支払われます。例えば複数の国債や社債を異なる時期で組み合わせることで、毎月どこかしらの債券から利息が入る“月次インカムポートフォリオ”を構築することも可能です。
この仕組みを活用することで、定期的なキャッシュフローを得ながら、再投資によってさらに資産を増やしていくサイクルが生まれます。
3. 「ロンバートローン」でレバレッジをかけられる
そして富裕層の債券運用において最大のポイントは、「ロンバートローン」との組み合わせです。
たとえば、シンガポールのプライベートバンクでは、投資した債券の評価額の80〜90%を担保に融資を受けることが可能です。この資金を再度債券に投資することで、安定した運用先に“適度なレバレッジ”をかけて効率的に資産を増やすことができます。
私のまわりでも、実際にシンガポールのPBで債券に1.5倍程度のレバレッジをかけて、年利8%前後の堅実な利回りを実現している方が多くいらっしゃいます。
さらに、資金に十分な余裕があり、追証(マージンコール)リスクを負える方であれば、年利10%以上のリターンを目指した運用を行っている方も存在します。
これは、日本国内では到底実現が難しい運用効率です。金融制度やサービスの柔軟さがもたらす、“世界水準の資産運用”の実例と言えるでしょう。
マレーシア・シンガポール移住で得られる「非課税運用」のメリット
多くの富裕層が、マレーシアやシンガポールへの移住を選ぶ理由のひとつに、投資にかかる税金の優遇制度があります。
日本に住みながら投資を行う場合、たとえどれだけ効率よく運用しても、利益の約20%が税金として差し引かれます(所得税+住民税)。一方、マレーシアやシンガポールに移住すると、一定条件のもとで投資収益に対して非課税、あるいは極めて低い税率で運用することが可能になります。
1. マレーシア:譲渡益・配当・利息すべて非課税(原則)

マレーシアは、キャピタルゲイン(譲渡益)税・配当課税・利子課税が一切かからない、非常に優遇された税制を持つ国です。
これは、日本のように株式や債券の運用益に約20%の課税がある環境とは大きく異なり、投資で得た利益がそのまま全額手元に残るという、資産運用において極めて理想的な条件を意味します。
さらに、相続税や贈与税もマレーシアには存在しません。そのため、「得た利益を再投資に回す」「子どもに資産をそのまま引き継ぐ」といった複利効果と資産承継の最適化が可能になります。
マレーシアに居住しながら、資産運用はシンガポールのプライベートバンクで行っている方が多数いらっしゃいます。マレーシアの税制メリットを享受しつつ、シンガポールの高度な金融サービスやPBのロンバートローンなどを組み合わせて、より効率的に資産を増やしているのです。
ただし、日本の税制では「10年ルール」と呼ばれる制度があり、海外移住後10年以内に相続や贈与を行うと、日本側で課税対象となる可能性がある点には注意が必要です。完全に日本の課税関係から外れるには、原則として10年以上の海外非居住期間が求められます。
2. シンガポール:制度化された富裕層向けの投資優遇
シンガポールでも、基本的にキャピタルゲイン課税はゼロであり、株式・債券・ファンドなどの運用益に税金はかかりません。さらに、1,000,000シンガポールドル以上の資産保有者がPBを通して「認定投資家(Accredited Investor)」登録を行うと、より高度で柔軟な金融商品へのアクセスが可能となり、グローバルにレバレッジをかけた運用も実現できます。
また、シンガポールは国際的なファミリーオフィス拠点としても人気で、資産管理・税務戦略・次世代承継の拠点として非常に優れています。
3. 日本の税制との決定的な違い
一方、日本では投資収益に対する課税はもちろん、証券担保ローンの使い勝手も悪く、レバレッジ投資の自由度が極めて低いというのが実情です。
それに比べて、マレーシアやシンガポールでは、
- 資産運用に関する税金がかからない(または極めて軽い)
- 投資による資産成長のスピードが段違い
- PBを通じたローン活用やグローバル分散投資がしやすい
という資産形成・保全において圧倒的に有利な環境が整っています。
プライベートバンクの総合窓口EAMの存在
一般的に、プライベートバンクを利用しようと思ったときには、各銀行の支店に直接問い合わせをするか、既存の顧客から担当バンカーを紹介してもらうというルートが主流です。特にプライベートバンクの場合、個別紹介が重要な意味を持ち、担当者の腕や相性によって運用成績や対応の質も変わると言われています。
ただし、このような方法では、選べる銀行が限られていたり、担当者ごとに手数料体系が異なるなど、運用者側が比較しにくい側面もあります。
そんな中、近年注目を集めているのが「EAM(External Asset Manager/外部資産運用会社)」という仕組みです。これは、プライベートバンカーが各銀行の内部ではなく、独立したIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として外部に存在する形態を指します。
EAMのメリット
- 複数のプライベートバンクに横断的にアクセスできるため、顧客の資産状況に応じて最適な銀行を選び、口座開設・運用を手配してくれる。
- 手数料交渉がしやすく、透明性が高い。銀行に直接依頼するよりも、低コストでの運用が実現できるケースもあります。
日本の金融機関に比べ、プライベートバンクはもともと手数料が比較的明確で低水準ですが、EAMを通すことでさらに交渉の余地が生まれ、柔軟な運用戦略が取りやすくなるのです。
EAMのデメリット
- 銀行本体から直接顧客として認識されないことが多いため、富裕層向けの非金融サービス(旅行・医療・国際教育・資産承継支援などのコンシェルジュサービス)を受けにくい場合があります。
- つまり「プライベートバンクの“ラグジュアリーな世界観”を楽しみたい」という方には物足りなく感じることもあるでしょう。
しかし逆に言えば、手数料が安くなった分を自分で使って贅沢する方が合理的だという考え方を持つ人にとっては、EAMは非常に魅力的な選択肢となります。
特に、「金融商品には費用対効果を」「非金融の特典にはあまり興味がない」というタイプの資産家にとって、EAMは柔軟性と効率性を兼ね備えた理想的な窓口だと言えるでしょう。
最後に
海外移住を経験し、数多くのFIRE達成者や富裕層と関わってきた中で強く感じるのは、「お金の使い方」ではなく、「お金の置き場所と使い方の選択肢」が人生の自由度を大きく左右するということです。
特に、日本では実現が難しい運用手法や制度も、シンガポールやスイスのプライベートバンク、そしてマレーシアやドバイという非課税環境に身を置くことで、一気に選択肢が広がります。
- 債券へのレバレッジ投資
- ロンバートローンの活用
- 非課税での資産運用
- 効率的な資産承継
といった戦略が、現実的な選択肢として機能するのです。
なお、私自身もマレーシア在住で、これまで多数の移住者や投資家の方々をサポートしてきました。マレーシア移住に関するご相談や、シンガポールのプライベートバンク口座開設に関するご相談も承っておりますので、ご関心のある方はお気軽にご連絡ください。
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海外移住コンサルタント 山本聖
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