【2026年6月改定】マレーシア法人で外国人を雇う経営者向け|就労ビザ(EP)給与倍増への対応(給与設計・更新・後継者計画)

マレーシア法人で外国人を雇う経営者向け|就労ビザ(EP)給与倍増への対応

FSIGMA株式会社 海外移住コンサルタントの山本聖です。

2026年6月1日から、マレーシアの就労ビザ(Employment Pass、以下EP)の最低給与がほぼ倍になりました。カテゴリーⅠはRM10,000からRM20,000へ。この記事は、マレーシア法人で外国人を雇っている、あるいはこれから雇う経営者・人事の方に向けて、今回の改定で何を見直す必要があるのかをまとめたものです。制度の全体像は「マレーシア就労ビザ(EP)の給与条件改定を解説」に、就職する側の話は「BPO・カスタマーサポートに就職したい人へ」に分けてあります。

先に結論です。日系企業のEP保有者の約7割がカテゴリーⅡ・Ⅲの給与水準にあり、次の更新と2027年1月からの後継者計画が、ほぼ全ての会社で現実の課題になります。分かれ目はRM10,000とRM20,000。判定は契約書の基本給だけです。

この記事の要点(30秒で分かる)
  • 誰が対象:2026年6月1日以降に出す新規・更新の申請全て。今のパスは満了まで有効。
  • 分かれ目:基本給RM10,000未満はⅢ(最長5年)、RM10,000〜19,999はⅡ(最長10年)、RM20,000以上はⅠ。手当は足せない。
  • 後継者計画:Ⅱ・Ⅲで2027年1月1日から提出義務。守らないと次の申請に影響。
  • コスト:Ⅰを維持するなら1人あたり年RM120,000(約480万円)増。

最終更新:2026年11月4日
(マレーシア移民局ESD・内務省の公式資料、JETRO・JACTIMの調査を確認の上執筆)

※制度は変わることがあります。個別の判断は専門家にご相談ください。
※円換算は1RM≒40円の目安です。

クアラルンプールの中心地KLCCの様子
クアラルンプールの中心地KLCCの様子
目次

1. まず押さえる改定の要点(2026年6月1日〜)

EPカテゴリー改定前改定後在留できる期間
カテゴリーⅠRM10,000以上RM20,000以上最長10年
カテゴリーⅡRM5,000〜9,999RM10,000〜19,999最長10年(後継者計画)
カテゴリーⅢRM3,000〜4,999RM5,000〜9,999最長5年(後継者計画)

※カテゴリーⅢのうち製造業・製造関連サービス(MRS)はRM7,000〜9,999。
出典:マレーシア移民局ESD「Revised Employment Pass Salary Policy effective 1 June 2026」

マレーシア就労ビザ(EP)最低月給の改定前後比較(2026年6月1日施行)
  • 新規も更新も全て新基準。更新は満了の3か月前から出せ、その時期が6月1日以降なら新基準です。
  • 判定は基本給のみ。手当・ボーナス・インセンティブは含みません。マレーシア国外で支払う給与も対象外とされています。
  • 在留年数の上限は「同じ会社・同じ職位・同じカテゴリー」で数えます。
  • 後継者計画の提出義務は2027年1月1日に延期されています。ESDが2026年5月26日に発表したものです。

出典:内務省「Revised Expatriate Salary Policy FAQ」、ESD「Revised Expatriate Salary Booklet」、JETROビジネス短信(2026年6月)

せい社長
せい社長
読む前に、言葉をすこしだけ
  • JACTIM:マレーシア日本人商工会議所。日系企業の団体です。
  • MIDA:マレーシア投資開発庁。製造業などの認可を出す役所で、MIDA管轄の会社はビザの申請窓口が別になっています。
  • TalentCorp:人的資源省の下にある人材機関。EPの審査実務を担うMYXpatsの親会社です。

2. 日系企業の約7割が関係します(JACTIM・JETRO調査より)

数字を見ると、今回の改定がどれだけ身近かが分かります。JACTIMとJETROが2026年2〜3月に行った共同アンケート(有効回答208社)では、回答企業のEP保有者を新しいカテゴリーに当てはめると、約7割がカテゴリーⅡまたはⅢの給与水準でした。つまり多くの日系企業で、後継者計画の提出と、更新時の給与見直しが現実の課題になります。「駐在員の就労に問題を感じている」と答えた企業は73.1%。前年の26.5%から一気に増えました。

JETROのレポート(2026年7月)には、もう一つ気になる数字があります。日系企業のカテゴリーⅠ保有者のうち、新基準のRM20,000をクリアできるのは16.6%。但しTalentCorpへの口頭確認では「マレーシア法人との雇用契約書に書かれた月額基本給でカテゴリーを判断する」とのことで、給与の一部を日本で受け取っている駐在員でも、契約書の書き方しだいでクリアできる余地があるとされています。ここは当局の正式な発表待ちなので、更新前に必ず最新情報を確認してください。

出典:JETROビジネス短信「雇用パス制度改正に伴う現地人材への継承計画、提出義務付けを延期」(2026年6月)、JETROミニレポート「雇用パス申請における最低給与改定実施の現状」(2026年7月)、JETROビジネス短信「雇用パスとインターン義務化の解説セミナー開催」(2026年8月)

3. 現地採用・駐在員・役員、それぞれの給与と更新をどう考えるか

立場これまでの典型2026年6月以降に見直すこと
現地採用(日本人スタッフ)RM5,000〜9,999でⅡ同じ給与ならⅢ扱い(最長5年)。Ⅱを維持するなら基本給RM10,000以上に
駐在員(マネージャー・MD)役職に関係なく給与額でⅡを選べたⅡ・Ⅲに後継者計画が付き、役職と区分が結びつく方向。MDクラスはⅠ(RM20,000以上)が前提
役員・経営者本人RM10,000でⅠRM20,000以上でⅠ。後継者計画を出してカテゴリーⅡにする道もある

更新の時は、給与明細と納税証明の提出が求められます。契約書に書いた基本給どおりに毎月振り込み、納税している記録が揃っているかが見られるので、「契約書だけ書き換える」はできません。

出典:JETROビジネス短信(2026年1月・8月)、ABROADERS CAREER「マレーシア駐在員MDの年収と求人」(2026年5月)

せい社長
せい社長
ワンポイントアドバイス

MIDAの認可を受けている会社は、2026年3月16日から申請窓口が「MIDA Expatriate System(MES)」に変わっています。対象は製造業、国際調達センター、プリンシパルハブ、駐在員事務所などです。キーポストはRM20,000以上で後継者計画は不要、タームポストはRM5,000以上、製造業ならRM7,000以上で、後継者計画が必要です。1回の申請で認められる年数も給与で決まります。RM30,000以上なら60か月、RM10,000〜19,999なら36か月などです。自社がMIDA管轄かどうかで手続きが違うので、まずそこを確認してください。

4. 「後継者計画」って何を出すの?(2027年1月1日から提出義務)

内務省のFAQによると、後継者計画に入れるのは次の4つです。

  • 将来マレーシア人に引き継ぐ職務と役割。
  • 研修・メンタリング・知識移転の進め方。
  • 現地社員が独り立ちするまでの期限。
  • 引き継ぎ中に業務を止めないための計画。

決まった書式はまだ公表されていません。実施状況は書類と定期報告で確認され、計画を守らないと、その会社の次の申請が通らなくなる可能性があります。「出せばいい書類」ではなく、本当に人を育てる計画として作る必要があります。

出典:内務省「FAQ: Revised Employment Pass Salary Policy」(Q2・Q13・Q20)、MDEC「Revised Expatriate Salary and Employment Pass Policy FAQ」(Q30〜Q34)

せい社長
せい社長
せい社長の視点

正直に言うと、後継者計画を一番重く受け止めるべきなのは、小さな会社です。大きな会社は人事部が動きますが、少人数の会社では経営者自身が「誰に、何を、いつまでに引き継ぐか」を決めることになります。私のお客さまには、計画を書く前に「この仕事は本当に外国人でないとできないのか」を一度棚卸ししてもらっています。そこが整理できると、計画は自然に書けます。

5. 1人あたり、年間でいくら変わるのか

カテゴリーⅠを維持する場合の最低ラインで試算します。

項目改定前改定後(カテゴリーⅠ)
必要な基本給(月)RM10,000(約40万円)RM20,000(約80万円)
必要な基本給(年)RM120,000(約480万円)RM240,000(約960万円)
会社負担のEPF(2%)年RM2,400年RM4,800

※EPF(マレーシアの積立型年金)は2025年10月から外国人も加入義務。会社2%+本人2%。

年間でRM120,000、約480万円の増加です。受け取る本人の所得税も増えます。ここを「人件費の増加」とだけ見るか、「後継者計画と合わせて組織を現地化する機会」と見るかで、会社の5年後が変わります。

出典:マレーシア移民局ESD告知(2026年1月15日)

6. 経営者のケースで考える

ケース1:日本から駐在予定のBさん

給与は会社が設計するので、本人の負担は小さい立場です。但し、マレーシア法人との契約書に書く基本給がRM20,000以上ならカテゴリーⅠ、RM10,000〜19,999ならⅡで後継者計画が付きます。日本で受け取る給与の扱いは正式見解待ちなので、人事と「契約書上の基本給をいくらにするか」を早めに詰めておくと安心です。

ケース2:外国人社員を3人抱える経営者のDさん

まず3人の基本給と更新時期を一覧にしてください。RM10,000未満の人は次の更新でⅢ扱いになり、2027年1月以降は後継者計画の提出も必要です。給与を上げてⅡを維持するか、Ⅲのまま5年で現地化するか、人ごとに決める。5章の試算と4章の後継者計画の4項目が、そのまま判断の材料になります。

ケース3:これから法人を作って自分にビザを出すEさん

本土で商売をする一般法人なら、ご自身のビザはカテゴリーⅠでRM20,000(年間約960万円)が前提です。後継者計画を出してⅡで申請する道もありますが、「自分の仕事をマレーシア人に引き継ぐ計画」が必要になります。払込資本(日本人100%ならRM500,000)や求人公告も合わせて設計してください。本土向けの商売をしない事業なら、ラブアン法人という選択肢もあります(本編の6章)。

FSIGMAができること

弊社は日本の会社ですが、グループ会社がマレーシア(クアラルンプール)とラブアンにあります。マレーシア法人やラブアン法人の設立、就労ビザの取得を、日本とマレーシアの両方から支えることができます。

  • マレーシア法人(Sdn Bhd)の設立と、就労ビザ(EP)の申請・更新のサポート。
  • 2026年6月改定に合わせた給与設計、後継者計画づくりのご相談。
  • ラブアン法人の設立、就労ビザ・扶養ビザの取得。
  • 給与計算とEPF・SOCSO・PCBの手続き代行(Payrollサービス)。
  • 日本の国際税理士、マレーシア現地の会計士・弁護士のご紹介。

マレーシアに住んでいる私が、Zoomで直接お話を伺います。相談は無料です。

カテゴリーⅢの社員も、家族を呼べるようになったと聞きました。条件はありますか?

2026年6月1日以降の申請なら、カテゴリーⅢでも配偶者と18歳未満のお子さんの扶養パス(Dependent Pass)を申請できます。ご両親・配偶者のご両親・18〜25歳のお子さん・事実婚のパートナーは長期滞在社会訪問パス(LT-SVP)の対象です。いずれも給与要件と医療保険の加入が条件になります。

社員が転職してきた場合や、途中でカテゴリーが変わった場合、在留年数はどう数えますか?

年数は「同じ会社・同じ職位・同じカテゴリー」で数えます。他社から転職してきた社員は、御社の入社日から数え直しです。昇給でカテゴリーがⅢからⅡに変わった場合も、新しいパスの発給日から数え直しになります。

日本で受け取っている給与を、基本給に含めて申請できますか?

当局の正式な見解はまだ出ていません。ESDの冊子では「マレーシア国外で支払う給与は対象外」とされる一方、JETROがTalentCorpに口頭で確認した所では「マレーシア法人との雇用契約書に書かれた基本給で判断する」との回答でした。契約書に書く基本給の額を、人事と早めに決めておくことをお勧めします。

EPを持つ社員が退職して、デジタルノマドビザ(DE Rantau)に切り替えたいと言っています。会社がすることは?

会社からのリリースレター(退職を確認する書面)が必要です。カテゴリーⅠ・Ⅱの方は、移民局でEPを短縮または取り消せば、マレーシアにいたまま手続きできます。カテゴリーⅢの方は、EPの取り消し後に一度出国する必要があります。

まとめ

  • 2026年6月1日から最低給与はほぼ倍。新規も更新も対象で、判定は基本給のみ。
  • 日系企業のEP保有者の約7割がⅡ・Ⅲの給与水準。社員ごとの基本給と更新時期を一覧にするところから。
  • 分かれ目はRM10,000(Ⅱ/Ⅲ)とRM20,000(Ⅰ)。給与を上げて区分を維持するか、後継者計画を前提に現地化するかを人ごとに決める。
  • 後継者計画は2027年1月1日から提出義務。「出せばいい書類」ではなく育成の計画として作る。
  • MIDA管轄の会社は申請窓口がMESに変わっている。

制度はこれからも変わります。最新の情報や、ご自身に合った方法については、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

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こんな方は、お気軽にご相談ください

  • ✓次の更新で、社員のカテゴリーが下がりそうで心配な方
  • ✓駐在員・現地採用の基本給をどう組めばよいか迷っている方
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  • ✓MIDA管轄の会社で、申請の窓口が変わって戸惑っている方
  • ✓これからマレーシア法人・ラブアン法人を作って、ご自身のビザを出したい方
山本聖 FSIGMA株式会社海外移住コンサルタント

記事執筆者

山本 聖(やまもと せい)

FSIGMA株式会社 海外移住コンサルタント / IYOU Accounting Advisory PLT 日本代表

横浜生まれ。慶應義塾大学法学部卒。
学生起業を経て、マレーシア・クアラルンプールへ移住。
日本人経営者・富裕層向けに、マレーシア移住・海外事業進出を支援。ラブアン法人・マレーシア法人設立、各種ビザ取得サポート、遺言書作成サービスはじめ、プライベートバンクや国際信託を活用した資産形成・資産承継コンサルティングを行う。これまでに500名以上の日本人経営者・富裕層の海外移住・資産形成相談、サポート実績。

▶ YouTube「せい社長のグローバルライフ」
📷 Instagram @yamamoto.sei

参考資料

  • マレーシア移民局 Expatriate Services Division「Revised Employment Pass Salary Policy effective 1 June 2026」「Revised Expatriate Salary Booklet」
  • マレーシア内務省「Revised Expatriate Salary Policy FAQ」「FAQ: Revised Employment Pass Salary Policy (Official Responses)」
  • MDEC「Revised Expatriate Salary and Employment Pass Policy FAQ and Briefing Deck」(2026年5月20日)
  • JETRO ビジネス短信(2026年1月・6月・8月)、JETRO クアラルンプール事務所 ミニレポート「雇用パス申請における最低給与改定実施の現状」(2026年7月)
  • ABROADERS CAREER「マレーシア駐在員MDの年収と求人」(2026年5月)
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