FSIGMA株式会社 海外移住コンサルタントの山本聖です。
2026年6月1日から、マレーシアの就労ビザ(Employment Pass、以下EP)の最低給与がほぼ倍になりました。「求人は減ったの?」「日本語のカスタマーサポートで、ビザは取れる?」「何年いられるの?」。この記事は、マレーシアで働きたい方、すでに現地採用で働いている方の、そんな疑問に答えるものです。制度の全体像は「マレーシア就労ビザ(EP)の給与条件改定を解説」に、雇う側の話は「経営者向けの記事」に分けてあります。
先に結論です。日本語の仕事のほとんどは、もともと新基準の範囲内。分かれ目は月給RM10,000で、未満ならカテゴリーⅢ(最長5年)、以上ならⅡ(最長10年)です。
- 求人:減った・高給の仕事だけになった、という裏付けは今の所なし。日本語対応の相場はRM8,000〜10,500。
- 分かれ目:基本給RM10,000。Ⅲは最長5年、Ⅱは最長10年。判定は基本給だけで手当は含まない。
- 特例:GBS(BPOなど)の母語レベルの語学職は、2027年6月1日まで旧基準で審査できる(MDEC)。
- 家族:カテゴリーⅢでも、6月1日以降の申請なら配偶者・18歳未満の子を呼べる。
最終更新:2026年11月4日
(マレーシア移民局ESD・内務省・MDECの公式資料、JETROの調査、人材会社の公開情報を確認の上執筆)
※制度は変わることがあります。個別の判断は専門家や雇用先にご確認ください。
※円換算は1RM≒40円の目安です。

1. まず押さえる改定の要点(2026年6月1日〜)
| EPカテゴリー | 改定前 | 改定後 | 在留できる期間 |
|---|---|---|---|
| カテゴリーⅠ | RM10,000以上 | RM20,000以上 | 最長10年 |
| カテゴリーⅡ | RM5,000〜9,999 | RM10,000〜19,999 | 最長10年(後継者計画) |
| カテゴリーⅢ | RM3,000〜4,999 | RM5,000〜9,999 | 最長5年(後継者計画) |
※カテゴリーⅢのうち製造業・製造関連サービス(MRS)はRM7,000〜9,999。
出典:マレーシア移民局ESD「Revised Employment Pass Salary Policy effective 1 June 2026」

- 新規も更新も全て新基準。今のパスは満了まで有効で、次の更新(満了3か月前から)が新基準になります。
- 判定は基本給のみ。住宅手当や語学手当、ボーナスは含みません。
- カテゴリーⅢでも家族を呼べるようになりました(6月1日以降の申請)。
- 後継者計画(会社が出す、あなたの仕事をマレーシア人に引き継ぐ計画)は2027年1月1日からⅡ・Ⅲで提出義務。
出典:内務省「Revised Expatriate Salary Policy FAQ」、ESD「Revised Expatriate Salary Booklet」

- BPO:企業から業務を受けて代行する会社。マレーシアでは日本語のカスタマーサポートなどで、日本人を多く雇っています。
- GBS:Global Business Services。BPOやシェアードサービスを含む業界の呼び名で、政府機関のMDECが支援しています。
- 現地採用:日本の会社から派遣される「駐在員」と違い、マレーシアの会社と直接契約して働く形です。
2. 求人は減ったの?
結論から言うと、「減った」という裏付けは今の所ありません。公的な求人統計はなく、人材紹介会社の公開情報を見る限り、改定後も日本語の求人は出続けています。マレーシアスカウトが2026年8月に現地の人材紹介会社や進出コンサルに聞いた所では、BPOや技術職・事務職の日本人の給与はもともと新基準のRM5,000を上回っているため、「ビザの取得が遅れた」「否認された」という例は出ていない、とのことでした。
但し、カテゴリーⅢでは職務記述書の提出が必須になり、審査が慎重になって承認に時間がかかる可能性は指摘されています。
出典:マレーシアスカウト「マレーシア就労ビザ(EP)の給与基準が改定!日本人現地採用への影響は?」(2026年8月19日)
3. 給与の高い仕事しか募集されなくなったの?
これも「そうではない」が答えです。新しいカテゴリーⅢの下限はRM5,000。日本人向けの求人は、未経験のカスタマーサポートでもRM8,000前後からが相場なので、ほとんどの日本語の仕事は、もともと新基準の範囲に入っています。影響が出やすいのは英語だけの入門レベルのBPO(相場RM3,000〜4,800)で、こちらはRM5,000に届かない求人が成り立たなくなります。日本語話者への需要は、むしろ相対的に残りやすいと言えます。
出典:JobStreet(2026年10月時点の求人)、CS Malaysia「マレーシアの平均年収・平均月収」(2026年6月時点)
4. BPO・カスタマーサポートの給与は上がったの?
人材紹介会社CS Malaysiaがまとめた、日本人向けの相場(2026年6月時点)です。
| 職種 | 月給の目安 | 経験の目安 |
|---|---|---|
| オペレーター(カスタマーサポート) | RM8,000〜10,500 | 0〜1年 |
| SME(専門担当・管理職の入口) | RM10,000〜11,500 | 1〜2年 |
| QA(品質管理) | RM10,500〜12,000 | 1〜2年 |
| TL(チームリーダー) | RM12,000〜 | 2〜3年 |
※オペレーターは日本語のみRM8,000〜、日本語+英語RM9,000〜。円換算でおよそ32〜42万円。
2026年8月の実際の求人も、クアラルンプールやサイバージャヤのECサイト向けカスタマーサポートでRM8,500〜10,500、ペナンのSNSチャット対応でRM9,600と、相場どおりでした。「改定で給与が上がった」とは言い切れませんが、改定で給与が下がる理由もない、というのが今の状況です。
出典:CS Malaysia「マレーシアの平均年収・平均月収」「2026年8月の注目案件」
5. 日本人に人気の仕事は、どのカテゴリーに入るの?
カテゴリーは職種ではなく基本給で決まります。だから同じ「カスタマーサポート」でも、月給で区分が変わります。日本人に多い職種を、相場と合わせて並べると次のようになります。
| 職種 | 相場の目安 | カテゴリー | 在留できる期間 |
|---|---|---|---|
| カスタマーサポート(未経験〜1年) | RM8,000〜9,999 | Ⅲ | 最長5年※ |
| カスタマーサポート(経験者)・SME・QA | RM10,000〜12,000 | Ⅱ | 最長10年※ |
| チームリーダー・マネージャー | RM12,000〜19,999 | Ⅱ | 最長10年※ |
| 営業・ITエンジニア(経験者) | RM8,000〜15,000 | Ⅲ〜Ⅱ | 給与しだい |
| 拠点長・MD・高度専門職 | RM20,000以上 | Ⅰ | 最長10年 |
分かれ目は月給RM10,000です。RM9,999ならカテゴリーⅢで最長5年、RM10,000ならカテゴリーⅡで最長10年。同じ職種でも、ここで「マレーシアに何年いられるか」が変わります。相場が丁度この境目にある日本語カスタマーサポートの方は、基本給が1万を超えるかどうかを、転職や昇給の時の大事な判断材料にしてください。
※Ⅱ・Ⅲは2027年1月1日から会社が後継者計画を出す前提です。相場は人材紹介会社の公開情報に基づく目安で、カテゴリーの判定は申請時の基本給で行われます。
出典:CS Malaysia、JobStreet、Reeracoen「マレーシア就労ビザ(EP/雇用パス)条件が大きく変更されます」、マレーシアスカウト(職種とカテゴリーの対応表)
6. 駐在員は影響ないの?
影響はあります。但し受け止め方が違います。駐在員も制度上は同じEPなので、次の更新から新しい基準で審査されます。JETROによると、これまでMD(現地法人社長)クラスでも給与額によってはカテゴリーⅡで申請できていましたが、今後はⅡ・Ⅲに後継者計画が付くため、役職と区分が結びつく方向だとみられています。
一方で、駐在員の給与は会社が設計するものです。本人が交渉するというより、会社側が基本給の組み方(マレーシア払いの額)を見直す話になります。日本で受け取っている給与の扱いは、当局の正式見解待ち(詳しくは経営者向けの記事)なので、人事の方は最新情報を追ってください。
出典:JETROビジネス短信(2026年1月・8月)、JETROミニレポート(2026年7月)
7. 日本語を使う仕事には特例があります(2027年6月1日まで旧基準)
ここは日本語で働く人に、一番知っておいて欲しい情報です。MDEC(デジタル経済公社)の公式FAQによると、GBS業界(BPO・シェアードサービスなど)で「母語または母語に近い語学力」が必要なカテゴリーⅢの職は、2027年6月1日まで旧基準(RM3,000〜4,999)で審査できます。会社側がGBS業界に属すること(GBS MalaysiaやCCAMの会員であることなど)と、その語学力が本当に必要なことを示す必要があります。
日本語カスタマーサポートの相場はRM8,000以上なので、この特例を使う場面は多くないかもしれません。それでも、日本語という技能が「代わりのきかない要件」として政府に認められていることは、日本語で働く人にとって心強い材料です。
出典:MDEC「Revised Expatriate Salary and Employment Pass Policy FAQ」Q49(2026年5月20日)
8. 内定をもらう前に、確認しておきたいこと

- 基本給の内訳:求人票の「RM9,000+手当」は、基本給がいくらかで区分が変わります。住宅手当や語学手当は判定に入りません。
- 自分のカテゴリー:基本給がRM10,000未満ならⅢ(最長5年)、
以上ならⅡ(最長10年)。契約書にどちらで申請するか確認を。 - 契約年数:1回の申請で認められるのは最長60か月。更新は満了の3か月前から出せます。
- 後継者計画:2027年1月以降はⅡ・Ⅲで会社が提出します。あなたの仕事を将来誰かに引き継ぐ計画がある、という前提を知っておいてください。
- 家族帯同:Ⅲでも配偶者と18歳未満のお子さんを呼べます。但し条件は申請時の規定によります。

相談を受けていて感じるのは、「ビザが下りるかどうか」だけを心配して、「何年いられるか」を見ていない方が多いことです。マレーシアで腰を据えて働きたいなら、最初の契約で基本給RM10,000に届くかどうかは、給与以上の意味があります。面接では遠慮せずに聞いてください。きちんとした会社ほど、ちゃんと答えてくれます。
9. あなたはどれに近い?ケースで考える
ケース1:現地採用のカスタマーサポートで働いているAさん(月給RM9,000)
今はカテゴリーⅡですが、次の更新は新基準なので、同じ給与ならカテゴリーⅢ扱いになります。在留できる期間は最長5年に。Ⅱを維持したいなら、更新前に基本給をRM10,000以上に上げてもらう交渉が必要です。会社が「手当を増やす」と言ってきたら、それは判定に入らないことを伝えてください。
ケース2:日本から駐在予定のBさん
給与は会社が設計するので、本人の負担は小さい立場です。但し、マレーシア法人との契約書に書く基本給がRM20,000以上ならカテゴリーⅠ、RM10,000〜19,999ならⅡで後継者計画が付きます。日本で受け取る給与の扱いは正式見解待ちなので、人事と「契約書上の基本給をいくらにするか」を早めに詰めておくと安心です。
ケース3:これからBPOに応募するCさん
求人票の「月給」が基本給なのか、手当込みなのかをまず確認してください。基本給RM8,000〜9,999ならカテゴリーⅢ(最長5年)、RM10,000以上ならⅡ(最長10年)です。5章の早見表を手元に置いて、面接で「どのカテゴリーで申請しますか」と聞けると、会社の誠実さも分かります。

FSIGMAができること
弊社は日本の会社ですが、グループ会社がマレーシア(クアラルンプール)とラブアンにあり、マレーシア法人やラブアン法人の設立、就労ビザの取得をサポートしています。就職活動そのものの仲介は行っていませんが、次のことはご相談いただけます。
- ご自身のビザの条件や、内定後の契約内容(基本給・カテゴリー・契約年数)の見方。
- 移住後の住まい探し・銀行口座開設・インターナショナルスクールのご案内。
- 将来、ご自身で法人を作って働きたい方への、マレーシア法人・ラブアン法人のご案内。
マレーシアに住んでいる私が、Zoomで直接お話を伺います。相談は無料です。
- 家族を連れて行く場合、誰がどのパスになりますか?
配偶者と18歳未満のお子さんは扶養パス(Dependent Pass)、ご両親・配偶者のご両親・18〜25歳のお子さん・事実婚のパートナーは長期滞在社会訪問パス(LT-SVP)が対象です。給与要件と医療保険の加入が条件になります。カテゴリーⅢの方は、2026年6月1日以降の申請から呼べるようになりました。
- 転職したら、「最長5年」「最長10年」の数え方はどうなりますか?
年数は「同じ会社・同じ職位・同じカテゴリー」で数えます。転職すれば新しい会社の入社日から数え直し、昇給でカテゴリーがⅢからⅡに変われば新しいパスの発給日から数え直しです。前の会社での年数は引き継がれません。
- 更新の時は、給与の額の他に何を見られますか?
給与明細と納税証明の提出が求められます。契約書に書かれた基本給どおりに毎月振り込まれ、納税されている記録が揃っているかが見られます。「契約書だけ基本給を上げる」という形は通りません。
- 会社を辞めて、デジタルノマドビザ(DE Rantau)に切り替えることはできますか?
できます。カテゴリーⅠ・Ⅱの方は、会社からリリースレターを受け取り、移民局でEPを短縮または取り消せば、マレーシアにいたまま手続きできます。カテゴリーⅢの方は、EPの取り消し後に一度出国し、承認後に再入国してから手続きします。
まとめ
- 日本語の仕事のほとんどは、もともと新基準(カテゴリーⅢの下限RM5,000)の範囲内。求人が減った裏付けは今の所ない。
- 分かれ目は月給RM10,000。Ⅲは最長5年、Ⅱは最長10年。判定は基本給だけ。
- GBSの母語レベルの語学職は、2027年6月1日まで旧基準の特例がある。
- 駐在員も同じEP。但し給与は会社が設計するもの。
- 内定前に、基本給の内訳・カテゴリー・契約年数・後継者計画・家族帯同の5つを確認する。
制度はこれからも変わります。最新の情報や、ご自身に合った方法については、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

記事執筆者
山本 聖(やまもと せい)
FSIGMA株式会社 海外移住コンサルタント / IYOU Accounting Advisory PLT 日本代表
横浜生まれ。慶應義塾大学法学部卒。
学生起業を経て、マレーシア・クアラルンプールへ移住。
日本人経営者・富裕層向けに、マレーシア移住・海外事業進出を支援。ラブアン法人・マレーシア法人設立、各種ビザ取得サポート、遺言書作成サービスはじめ、プライベートバンクや国際信託を活用した資産形成・資産承継コンサルティングを行う。これまでに500名以上の日本人経営者・富裕層の海外移住・資産形成相談、サポート実績。
参考資料
- マレーシア移民局 Expatriate Services Division「Revised Employment Pass Salary Policy effective 1 June 2026」「Revised Expatriate Salary Booklet」
- マレーシア内務省「Revised Expatriate Salary Policy FAQ」
- MDEC「Revised Expatriate Salary and Employment Pass Policy FAQ and Briefing Deck」(2026年5月20日)
- JETRO ビジネス短信(2026年1月・8月)、JETRO クアラルンプール事務所 ミニレポート(2026年7月)
- CS Malaysia「マレーシアの平均年収・平均月収はいくら?」「2026年8月の注目案件」、マレーシアスカウト「マレーシア就労ビザ(EP)の給与基準が改定!日本人現地採用への影響は?」(2026年8月)、Reeracoen Malaysia「マレーシア就労ビザ(EP/雇用パス)条件が大きく変更されます」、JobStreet(2026年10月時点の求人)









