FSIGMA海外移住コンサルタントの山本です!
マレーシアでは、2025年10月から外国人労働者に対しても年金・退職金制度(EPF)の積立義務化されました。今回は、ラブアン法人で就労ビザを取得されている外国人およびラブアンで雇用するマレーシア人従業員に対して、どのようなEPF・社会保険の適用があるかについて解説いたします。
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マレーシア年金制度:EPF(Employees Provident Fund)とは
概要
EPF(マレー語名 KWSP, Kumpulan Wang Simpanan Pekerja)は、従業員と雇用主双方が拠出する積立型年金制度です。将来の退職時、出国時、一部条件時に引き出すことができます。制度は日本のような「賦課方式」ではなく、個人積立方式です。国が運営主体として管理し、法律 EPF Act 1991 に基づいています。(kwsp.gov.my)
従来、外国人(非マレーシア市民)は EPF 加入が任意とされてきましたが、2025年10月からは有効な就労パス保有者について、一定の拠出が義務化される制度改正が導入されます。
口座区分と資金配分(新制度構成含む)
EPF は従来「Account I(退職用)」と「Account II(目的別用途可)」の 2 口座に拠出金を分配していました。
- Account I:主に退職後に引き出し可能
- Account II:住宅購入、医療、教育など特定用途での一部引き出し可
最近の制度改正により、Account III(Akaun Fleksibel) が導入されました。これはより柔軟な出金を許す口座で、最低出金額 RM 50 からいつでも引き出し可能な性質を持たせたものです。
新制度では、拠出金の配分比率も見直され、Convention/Shariah の区別を設け、拠出金の一部を Fleksibel 口座に配分する形式が検討されています。
Conventional と Shariah の違い
マレーシア人の多くはイスラーム教徒です。イスラームの教義上「金利」を受け取ることはできないため、イスラーム法に則って、金利ではなく、利益分配金という形で利益を受け取るシャリア(Shariah)方式があります。非ムスリムや外国人は一般的にConventional(従来型)を選択することになります。
| 項目 | Conventional(従来型) | Shariah(シャリア準拠型) |
|---|---|---|
| 投資対象 | 無制限。株式、債券、不動産、マネーマーケット等 | イスラム法に適合する資産のみ。利息を生む債券などは排除 |
| 切替性 | 通常 → Shariah への切替可 | 切替後は原則元に戻せない |
| 安定性・リスク | 比較的リスクも取る運用が可能 | より保守的な運用傾向が見られる |
| 配当保証 | 法律上最低配当率(2.50%)を保障する制度あり | 運用実績ベース。保証はない |
| 実務上の差 | 税務・分離資産運用の制約等あり | シャリアコンプライアンス対応が必要 |
このように、Conventional は比較的幅広な投資自由度がありますが、Shariah は宗教法制約のため運用対象が限定され、リターンも少しShariahの方が低い傾向にあります。
過去の EPF(KWSP)利回り実績がすごい
EPF が毎年発表している配当(Dividend)率は、会員の積立金に対するリターンを示す重要な指標です。以下は直近約 10〜15 年分の実績例と、長期平均の傾向です。
直近のEPF配当率実績例(Conventional / Shariah 別)
| 年度 | Conventional(従来型)配当率 | Shariah(シャリア準拠型)配当率 |
|---|---|---|
| 2024 | 6.30% | 6.30% |
| 2023 | 5.50% | 5.40% |
| 2022 | 5.35% | 4.75% |
| 2021 | 6.10% | 5.65% |
| 2020 | 5.20% | 4.90% |
| 2019 | 5.45% | 5.00% |
| 2018 | 6.15% | 5.90% |
| 2017 | 6.90% | 6.40% |
| 2016 | 5.70% | ―(Shariah 口座導入前) |
| 2015 | 6.40% | ― |
| 2014 | 6.75% | ― |
- EPF の公式サイトでも、2024 年配当率として 6.30%(従来型/シャリア双方) が発表されています。
- “Conventional(従来型)” は比較的安定した利回りを示しており、Shariah 型はその年の投資運用実績により上下する傾向が見られます。
- 過去 10 年(2014〜2024 年間)における従来型口座の平均配当率は 5.98%/年 と報じられています。
- また、過去 20 年間(2004〜2024 年)でも平均約 5.76%/年 という分析もあります。
- EPF は、法律上最低配当率として 2.50% を保証する制度を有しており、実運用が不振でもこの最低水準は下回らないようなセーフティーネットが設けられています(但し Shariah 口座には最低保証は適用されない)
- ただし、配当率は市場金利、株式市場、大型投資案件、不動産投資の成績、為替変動リスクなど多くの要因に左右されます。たとえば 2016 年には Brexit や世界的な経済不透明感の影響を受け、比較的低めの利回りが観察されました。
引き出し条件・受給年齢
EPF では、マレーシア人に対して(外国人は除く)以下のような条件で引き出し可能な制度が整備されています:
- 年齢 50 歳:Account II の一部を引き出し可能
- 年齢 55 歳:全額引き出し可能
- 出国時(恒久退去):Leaving Country Withdrawal によって一括出金可
- 障害、医療、住宅購入、教育など特定用途引き出し制度も存在
ただし、新制度リフォーム案(Dual retirement + pension scheme)では、今後「月次年金給付」方式が併設される可能性も議論されています。また、新制度導入により、引き出し構造が加入時期によって異なる扱いになる可能性があり、既存メンバーには従来制度が適用される案も報じられています。
2025年10月から義務化される外国人 EPF 拠出制度
これまで非マレーシア市民(外国人)は EPF 拠出が任意でしたが、政府は公平性・社会保障の拡充を理由に制度を見直しました。ラブアン法人の就労ビザを取得し、給与が発生する外国人もEPFへの拠出が義務化されました。日本の社会保険料と同じく、労使折半で拠出をします。
拠出率・拠出方法
- 施行日:2025年10月の賃金支給分より
- 拠出率:従業員 2%、雇用主 2%(計 4%)
- 対象:有効な就労パス保持者(Domestic worker(家政従業者)は除外対象)
- 初回納付期限:2025年11月15日までに初回拠出を行う必要あり
出金(引き出し)条件
- 外国人の場合は、出国(永久退去)時に全額出金可能とされます。
- ただし、引き出しの可否・タイミング(年齢制限・用途制限など)は制度詳細発表後に明確化される見込みです。
この制度により、外国人労働者も EPF 口座を持ち、配当を受け取り、退去時には積立金を回収できるようになります。
「KWSP i-Akaun」というアプリで、EPFの拠出金額や運用状況を把握することができます。
日本の社会保険制度との対比
| 制度 | 日本 | マレーシア(EPF 等) |
|---|---|---|
| 年金 | 国民年金 + 厚生年金(掛け金は労使折半) | EPF:従業員+雇用主拠出方式 |
| 健康保険 | 健康保険組合・全国健康保険 | マレーシアでは EPF とは別の医療制度。社会保障関連は SOCSO などで補償制度の性格を持つ |
| 雇用保険 | 雇用保険:失業時給付制度 | EIS:マレーシアの類似制度(失業手当・支援制度) |
| 労災保険 | 労災保険制度 | SOCSO(Pertubuhan Keselamatan Sosial)による業務災害・障害補償制度 |
日本で「年金拠出」「健康・社会保険」「雇用保険」「労災保険」を合算して給与控除されるのと同様に、マレーシアでも複数制度を合算して給与控除を計算する必要があります。EPF以外にもSOCSO(労災保険)・EIS(雇用保険)・PCB(所得税源泉徴収) の計算が必要になります。以下で、順にわかりやすく解説します。
SOCSO(Social Security Organization)=労災・障害保険
正式名称は「Pertubuhan Keselamatan Sosial」。
日本の「労災保険+障害年金」に近い制度で、雇用主と従業員の両方が拠出します。
【対象】
マレーシア人および永住者(PR)。ラブアン法人の場合は外国人も原則加入。
【計算方法】
給与テーブル(段階制)に基づいて算出されますが、概算は以下の通り:
- 雇用主拠出率:1.75%
- 従業員拠出率:0.5%
例)マレーシア人従業員 月給 RM2,400 の場合
→ 雇用主:RM2,400 × 1.75% = RM42.00
→ 従業員:RM2,400 × 0.5% = RM12.00
→ 合計 RM54.00 をSOCSOへ納付
※実際は法定テーブルにより±数リンギットの差が出ます。
公式テーブル参照:PERKESO Contribution Table
EIS(Employment Insurance System)=雇用保険(失業時補償)
2018年導入の制度で、失業時の生活補償や再就職支援に使われます。日本の「雇用保険」に相当します。
【対象】
SOCSO に加入しているマレーシア人雇用者(外国人は対象外)。
【計算方法】
給与の 0.2% を雇用主が負担、0.2% を従業員が負担。
例)月給 RM2,400 の場合
→ 雇用主:RM2,400 × 0.2% = RM4.80
→ 従業員:RM2,400 × 0.2% = RM4.80
→ 合計 RM9.60 をEISへ納付
※SOCSOと一緒に月次で支払い。
PCB(Potongan Cukai Bulanan)=月次源泉所得税
日本の「給与天引き所得税(源泉徴収)」に該当します。
従業員個人の税率(累進課税)に基づいて、雇用主が代わりに税額を天引きして納付します。
(※PCBはEPF・SOCSO・EISとは別にLHDN(内国歳入庁)へ支払い。)
【計算方法】
収入額、扶養人数、婚姻状況などで異なるため、公式のPCB計算ツールを使用します:
👉 LHDN公式 PCB Calculator
おおまかな目安:
- 月給 RM2,400 程度では 非課税 or 数リンギット程度
- 月給 RM4,000〜RM5,000 以上から段階的に税負担発生
- 年収 RM34,000(扶養なし)を超えると課税対象になるケースが多いです
ラブアンのマレーシア人スタッフの計算例(月給RM2,400)
| 項目 | 雇用主負担 | 従業員負担 | 備考 |
|---|---|---|---|
| EPF | RM312(13%) | RM264(11%) | 年金積立 |
| SOCSO | RM42 | RM12 | 労災・障害保険 |
| EIS | RM4.80 | RM4.80 | 雇用保険 |
| PCB | なし | なし(非課税想定) | 所得税源泉 |
雇用主合計負担:約RM359/月
従業員控除合計:約RM280/月
→ 手取り給与:約RM2,120
→ 雇用主総コスト:約RM2,760
外国人取締役の計算例(月給 RM10,000)
外国人の場合、2025年10月以降に EPF(年金積立) が義務化され、ラブアン法人の場合、SOCSO(労災)へも原則加入となっております。PCB(源泉税)は、毎月源泉徴収を行い、別途個人確定申告で処理されます。
| 項目 | 雇用主負担 | 従業員負担(控除) | 備考 |
|---|---|---|---|
| EPF | RM200(2%) | RM200(2%) | 2025年10月以降義務化 |
| SOCSO | RM175(1.75%) | RM40(0.5%) | 労災と障害の保険 拠出上限 賃金RM5,000 まで |
| EIS | 任意加入(対象外) | — | 外国人は対象外 |
| PCB(源泉税) | — | RM970(目安) | 年収12万MYR前後の場合10〜13%課税想定(各種控除あり) |
| 合計 | RM375 | RM約1,210 | — |
- 手取り給与:約 RM8,790
- 雇用主総コスト:約 RM10,375
*あくまも概算ですので実際の金額については会計士等の専門家に要ご確認ください。
最後に
ラブアン法人を構える際、スタッフ雇用を通じて ESR 要件を満たすだけでなく、社会保険・年金制度を正しく運用することが制度適合性・信頼性の観点からも不可欠です。
特に 2025年10月から義務化される外国人 EPF 拠出制度の導入によって、これまで「任意加入」だった外国人も標準的な社会保障体系の中に組み込まれるようになります。
複雑な手続きが必要になるように感じられるかもしれませんが、弊社のクライアント様に関しましては、給与計算やEPF・社会保険の手続きを代行する「Payrollサービス」を月200USD程度(4名分まで含む)で提供しておりますのでご安心ください。
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