マレーシアは、日本人の海外移住先として根強い人気があります。マレーシアに移住するためには、ビザを取得する必要がありますが、今回は最も人気なMM2Hビザについて解説いたします。
MM2Hビザ
MM2Hビザは、観光ビザの延長線上にある長期滞在ビザであり、就労ビザではありません。そのため、マレーシアで就労は認められていません。
MM2Hビザは、主に定期預金額や収入などの経済面での条件をクリアすれば取得できます。
MM2Hビザを取得すると、マレーシア政府より5年間の長期滞在が許可されます。
マレーシアは、長期滞在をするには様々な観点から日本人に非常に適した国です。マレーシアの経済成長性、治安の良さ、温暖な気候、日本と比較して安い物価など長期滞在先としてふさわしい条件が整っています。
従来、MM2Hビザは、別名リタイアメントビザとも呼ばれ、退職後に年金を使ってゆとりある生活を海外で送りたいという方からの人気が高かったものです。
しかし、最近ではマレーシアでの資産保有、子供の国際教育などを考える30代から50代の方の申請が増加しています。
全世界からのMM2Hビザ取得者総数は、2002年には800人程度でしたが、2017年には6,000人を超えるまで増加しました。2018年には40,000人を超えました。
その中でも日本人のMM2Hビザ取得者は特に多く、2018年時点での国別取得者の合計は中国に次いで第2位で、ここ数年は毎年200人台から400人台で推移しています。
MM2Hビザの申請条件改悪
2020年からコロナ禍においてMM2Hビザの新規発給を停止していましたが、2021年10月から発給が再開しています。しかし、以前よりも条件がかなり厳しくなりました。
今後様々な関係機関・団体からの批判や反対意見が発生し、撤回や修正される可能性はありますが、2022年8月15日時点では、厳しくなった条件は変わらないままとなっています。
MM2Hの申請条件が厳しくなったのは、中国人をはじめとした外国人の流入増加を食い止めたいという政府の意向があります。
【マレーシア政府の意向】
マレーシア国内におけるMM2Hプログラムの参加者本人と被扶養者の人数をマレーシア国民総人口の1パーセントを超えない水準に制限するものとしました。
また、セキュリティー強化のため、全ての申請者本人及び被扶養者は無犯罪証明書を提出する必要があります。
MM2Hビザの管轄は、2021年10月から内務省移民局となりました。
MM2Hビザ取得条件と費用
2021年以降の新しい申請条件について
*1RM≒30.5円換算(2022.7.6時点)
申請条件 | 従来 | 新 |
①申請可能年齢について | 申請時点で20歳以上 | 35歳以上 | 申請時点で
②収入条件について | 月RM10,000(約30.5万円)以上 | 以上 月RM40,000(約122万円) |
③流動資産証明について | 主申請者50歳以上:RM350,000(約1,068万円)49歳以下:RM500,000(約1,525万円) | RM1,500,000(約4,575万円) | 年齢に関係なく
④マレーシアの銀行での定期預金について | 主申請者50歳以上:RM150,000(約458万円)49歳以下:RM300,000(約915万円) | RM1,000,000(約3,050万円)扶養者一人あたり5万RM(約152万円)加算ただし、不動産取得、医療、教育目的で最大50パーセントの引き出しが可能 | 年齢に関係なく
⑤滞在義務について | マレーシアでの滞在義務一切なし | 35~49歳の方は毎年一年間に90日以上の滞在が必要50歳以上の方は従来通り滞在義務なし |
⑥ビザの権利の有効期間 | 初回発給時より10年間更新可能 | 初回発給時より5年間申請条件を満たす限り5年ごとに延長可能 |
⑦年間パス登録料 | RM90/年 | RM500/年 |
⑧ビザ発行手続き費用(初回のみ) | RM500/人 | 主申請者:RM5,000(約15万円)配偶者:RM2,500(約8万円) |
⑨ビザの権利の延長更新時の条件 | 基本的には定期預金を継続していれば可 | 新条件をすべて満たしていること |
収入や財産要件が非常に厳しくなったことがわかります。これは、移住者数を絞り、富裕層かつマレーシアにメリットになりそうな人を呼び込もうとするものと考えられます。
条件改正前からすでにMM2Hビザを保有している方については、新条件のうち「年間パス登録料RM500/年」「年間90日以上のマレーシア滞在」の2つのみを追加で満たす必要がありますが、そのほかの財産や収入条件は以前のまま据え置きでよいとし、要件が緩和されています。
MM2Hビザ取得のメリット
語学力など不問で申請可能
多くの先進国では長期滞在ビザの申請条件に、語学力・現地でのビジネス歴・宗教などの制限を設けているケースが多いです。
しかし、MM2Hビザは、主として資産・収入条件を満たしていればOKで、語学力などは求められません。
高齢の資産家や、会社を退職して第二の人生を充実させたい夫婦の移住先として人気が高いのは、MM2Hビザの申請に語学力の制限がない点も大きいと言えます。
マレーシアの公用語はマレー語ですが、多民族国家でもあり英語が実用語として使われています。
移住時に語学力は求められないものの、移住後の生活を充実させるためには、日常生活に困らない程度の英語力はあった方が良いでしょう。
節税対策になる
MM2Hの場合、マレーシアでは就労が認められていないので、マレーシア国外(日本など)からの収入に頼って生活することになります。
マレーシアでは、国外源泉所得に対する課税がありません。例えば、日本から給与収入を得ていて、日本で源泉徴収されている所得については、マレーシア国内では非課税になります。
そして、日本の税務上の非居住者になると、日本の会社から受け取る給与所得については一律約20%の源泉課税のみとなり、日本居住者の最大税率55%(所得税45%+住民税10%)に比べてはるかに税率が下がります。
なお、マレーシアに移住してから、マレーシアの銀行口座に年金を送金してもらう場合は、日本での約20%の源泉徴収税は課税されません。
さらに、マレーシアでは株式やFXなどの金融所得に対する課税がない他、仮想通貨の利益に対しても非課税となっており、投資家にとってかなり魅力的な税制となっています。
マレーシアの銀行口座を開設可能
MM2Hビザを取得するとマレーシアの銀行口座を開設することができ、定期預金の金利は年2.5%〜3.0%程度であり、日本に比べて高い利子が魅力的です。
利子のメリットが全くない日本の銀行に貯蓄するよりも、マレーシアの銀行口座を使って貯蓄する方が資産効率が良くなります。マレーシアでは、利子に対しても非課税です。
さらに、日本では購入できないような保険や投資信託などの金融商品を購入することが可能になります。
不動産購入可能で、ローン融資の条件も良い
MM2Hビザを取得することで、マレーシアで不動産を購入でき、ローン融資の利用もしやすくなります。
マレーシア居住者でなくとも不動産の購入は可能ですが、居住者の方が使えるローンや融資が多く、審査にも通りやすいというメリットがあります。
マレーシアでは、外国人による不動産の所有が認められており、外国人投資家からの不動産投資も活発です。
マレーシアの不動産価格は日本よりも安い(3分の1程度の価格)ため、ジムやプール付きのハイグレードな住居に気軽に住むことができます。
家族も帯同できる
子供たちをマレーシアのインターナショナルスクールに入れて、国際感覚を養わせることもできますし、ご両親に老後の快適な生活をプレゼントすることもできます。
MM2Hビザの取得方法
MM2Hビザの申請・取得方法ですが、一般的にはMM2H取得の手続きを代行してくれる専門業者を利用します。申請取得に必要な実費の他、業者への手数料が20万円程度かかります。
日本人の業者も多く、マレーシアを熟知しているプロが手続きを行ってくれるため、安心感があり、移住後の生活の情報などの現地の生の情報も聞くこともできます。
ただし、委託前に、マレーシア政府の認可を受けた業者か否か、必ず確認することを忘れないでください。
代行業者を使わず個人で申請することもできます。
今回は個人でMM2Hビザを取得する場合の手順を簡単にご紹介します。
必要書類を用意してマレーシア・マイ・セカンドホームセンターへ提出します。
提出書類は、申請書や写真などの一般的書類から、なぜMM2Hビザを申請したのかという内容を英語で書いたカバーレター、その他英語の証明書が13種類必要です。
これは、英語での書類作成に不慣れな方にとっては非常に困難な作業です。
審査をパスすると仮承認書が発行されます。MM2Hセンター内移民局より、審査を通過した申請者に仮承認書が発行されます。書類提出後、約4か月で発行されます。
仮承認書発行から6か月以内に、マレーシア現地での各種手続き(銀行口座の開設や医療保険の加入、健康診断など)を行います。
MM2Hセンター内移民局出張所にて、マレーシアの金融機関の証明書や健康診断書、医療保険証明書などの書類を提出します。
全ての書類に問題なければビザ取得できます。
マレーシアの現地事情を十分に把握し、英語での書類作成に慣れている方は、個人でも取得できるかもしれせんが、そうでない場合は、費用がかかっても代行業者に依頼した方が安心です。
MM2Hビザ以外の選択肢
MM2Hビザの申請条件が2021年から非常に厳しくなりましたので、MM2Hの取得を断念せざるを得ない方も増加しています。そこで、マレーシア移住する方法として、MM2Hビザ以外の選択肢についてもご紹介します。
S-MM2Hビザ
S-MM2Hというサラワク州が発行している長期滞在ビザがあります。サラワク州は、東マレーシア(ボルネオ島)にあるマレーシア最大面積の州です。サラワク州は、マレーシアの中でも独⾃の⽂化を持ち、また独⾃の⾃治権を有している特徴ある州です。
そのサラワク州が独⾃にすすめている制度が、サラワク州-マレーシア・マイセカンドホー ム・プログラム(S-MM2H)です。
S-MM2Hビザは、サラワク州政府が決めた基準を満たしている30歳以上の⽅に向けた制度であり、⺠族・宗教・性別を問わず、マレーシアが認めている全ての国籍の人が申請可能です。
S-MM2Hビザの取得条件は、MM2Hビザの取得条件と比べて取得しやすい(特に財産要件の点で)ものになっています。
ラブアン島で法人を設立して、就労ビザを取得
マレーシアの経済特区であるラブアン島に法人を設立して、自身が役員に就任することで就労ビザを取得するという方法です。
ラブアン就労ビザは、ラブアン島内はもちろん、西マレーシア(クアラルンプールやジョホールバル、ペナンなど)にも居住することが可能となっており、マレーシア移住の目的に活用することができます。
ラブアン法人では、マレーシア国外から収益を立てるビジネスのみ行えます。したがって、マレーシア国内に向けたビジネスができません。
IT、コンサルティング、貿易などでマレーシア国外(日本からでもOK)から収益を立てる事業を行っている方は、ラブアン法人の活用を検討すると良いでしょう。
ラブアン法人は、各種経済的要件を満たすと、法人税が0%または3%になる税制優遇を受けることもできます。
ラブアン法人については下記のページで詳しく解説をしておりますので、ぜひご参考ください。
まとめ
今回はマレーシアのMM2Hビザについて解説してきました。
収入や資産関連の申請条件が、従来に比べて厳しくなったため、MM2Hビザの申請者は激減するのではないかとの懸念があります。
しかし、単なる長期移住ではなく、タックスメリットを最大限に活かすべく海外移住したいという方にとっては、経済特区であるラブアンで法人を設立して、就労ビザを取得するという手法も検討すると良いでしょう。
弊社FSIGMA(エフシグマ)では、マレーシアへの移住サポートを行っております。ラブアン法人や一般法人の設立、ビザ取得、銀行口座開設、不動産などワンストップでサポートしております。
Zoomにて無料相談も実施しておりますので、マレーシアへ移住をお考えの方はぜひご活用ください。
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