マレーシアは、日本人に最も人気な移住先です。マレーシアへ移住するためには、長期滞在ビザや就労ビザ、学生ビザなどを取得する必要があります。
マレーシアの長期滞在ビザとしてはMM2Hが有名ですが、今回はサラワク州が発行しているS-MM2Hというビザについてご紹介します。
2021年からMM2Hの申請条件がかなり厳しくなったことを受け、比較的条件が緩いS-MM2Hへ注目が集まっています。
S-MM2Hビザの特徴
S-MM2H(Sarawak Malaysia My Second Home Program)は、東マレーシアにあるサラワク州が独自に発行している長期滞在ビザです。
サラワク州の紹介
サラワク州は、ボルネオ島(カリマンタン島)北西部の海岸沿いに位置するマレーシアで最大面積の州です。南シナ海沿岸には多くのビーチがあり、内陸部は熱帯雨林が広がり、国立公園として保護されています。州都であるクチンには、サラワク王国の宮殿であったアスタナ宮殿や海賊の侵入を防ぐマルガリータ砦などの歴史的建造物があります。
大自然と歴史を満喫できるのがサラワク州の大きな魅力です。
サラワク州へは、クアラルンプールから国内線で約1時間45分です。
マレーシアは連邦制であり、州ごとに入国管理を独自に行っているので、マレーシア国内からの移動であってもサラワク州入管時には、パスポートが必要になります。
シンガポールからもフライトがあり約1時間半です。
S-MM2Hビザ
サラワク州は、マレーシア国内において独自の自治権を有しています。これは、マレー連邦を構成するときの約束でした。そのため、S-MM2Hビザの条件もサラワク州独自で決めた条件で発行されています。
これまではあまり知られていませんでしたが、2021年に従来のMM2Hの申請条件が大幅に厳しく変更されたため、S-MM2Hがにわかに注目されるようになってきました。
このS-MM2Hの条件も今後変更になる可能性があるので、取得を検討されている方は早めに取得した方が良いかもしれません。
S-MM2Hは、マレーシアでの長期滞在ビザという点でMM2Hビザと類似していますが、その条件に大きな違いがあります。MM2Hビザと比べて条件が緩いです。
サラワク州のS-MM2Hは年齢によって申請条件が異なり、特に50歳以上の方は比較的緩い条件で申請できますが、50歳未満の方はサラワクへの投資や子供の学校を理由に申請が可能となります。
S-MM2Hビザの申請条件
1RM=30.7円(2022年7月7日時点)で計算。
共通条件(30歳代、40歳代、50歳以上)
50歳以上の方は、この共通条件のみ満たせばOK。
【共通条件】
【経済的要件】
以下の月収要件または定期預金要件のどちらかを満たす必要があります。
①月収要件
マレーシア国外での月収入(政府認定年金含む)が下記の通りであること。
単身:RM7,000(約21.5万円)以上
夫婦:RM10,000(約30.7万円)以上
※主申請者の方のみの収入、夫婦の収入の合算は不可。
②定期預金要件
サラワク州の銀行で下記金額の定期預金を組むこと。
単身:RM150,000(約460万円)
夫婦:RM300,000(約921万円)
※月収要件を用いる場合には、定期預金口座の開設は不要。
※夫婦合算可。
※定期預金は下記の最低維持預金額設定有り。
ビザ取得2年目以降に不動産購入、自動車購入、医療費、子供の学費(サラワク内の教育機関)の為に一部引き出しが可能。引き出し後も、単身:RM90,000(約276万円)、夫婦:RM180,000(約553万円)以上の預金額を維持する必要があります。
【滞在要件】
サラワク州に年間15日以上滞在義務有り。
【無犯罪歴証明書要件】
無犯罪歴証明書の提出義務有り。
40歳代(40歳~49歳)の方の共通条件以外の申請条件
以下3つの条件のうちいずれか一つを満たす必要があります。
①子供がサラワク州の学校で就学中である証明と子供の学生ビザの掲示。
※サラワク州内の不動産を購入していれば、子供をS-MM2Hに帯同し、別の州での就学が可能。
②下記条件のサラワク州内の不動産を購入する
クチン市の物件:RM600,000(1,842万円)以上の物件
クチン市以外の物件:RM500,000(1,535万円)以上の物件
③申請者または帯同者が長期間サラワク州で治療を受けなければならない理由がある場合(長期療養理由)。
30歳代(30歳~39歳)の方の共通条件以外の申請条件
以下2つの条件のうちいずれか一つを満たす必要があります。
①子供がサラワク州で就学中である証明と子供の学生ビザの提示。
※子供のS-MM2Hビザへの帯同は不可
②申請者または帯同者が長期間サラワク州で治療を受けなければならない理由がある場合(長期療養理由)。
S-MM2Hビザの申請方法
S-MM2H 申請の為の必要書類
ビザ申請書
申請人数分
記入、サインが必要。
パスポートコピー
申請人数分のパスポートの全ページコピー
更新1年未満の場合は、旧パスポートコピーも必要。
パスポートサイズのカラー写真
申請者ごと各6枚(3.5 x 5.0cmサイズ)
背景色は「青」のみ。
経済的証明
下記のAまたはBどちらかを提出します。
A. 月収証明書類
・政府認定年金通知書:直近3ヶ月分
・給与明細:直近6ヶ月分
・振込が確認できる銀行通帳やオンラインバンキングの取引明細書
・在職証明書(給与明細を提出する方)
B. 定期預金証明書(サラワク州内の銀行で口座開設し、必要金額以上を預金)
経済的証明以外の申請条件を満たすことを証明する書類(50歳未満の申請者のみ)
以下のいずれかの提出が必要です。
・入学オファーレター(子供がサラワク州内のインターナショナルスクールへ入学)
・病院からのレター(サラワク州内で長期治療を受ける)
・不動産購入証明書(サラワク州内のRM500,000以上の物件を購入)
※40歳~49歳の方のみ選択可
無犯罪証明書
主申請者及び夫婦で申請の場合は、配偶者分も必要
日本国内であれば警察署で発行可能(申請から受取まで約2週間)。
在外公館でも申請可能ですが、受取まで2~3ヶ月かかります。発行から6ヶ月以内のもの。
※2022年2月以降、夫婦申請の場合に配偶者も提出が必要となりました。
結婚証明書(夫婦で申請する場合)
配偶者の情報を含む戸籍謄本(原本と英語翻訳したもの)。発行から3ヶ月以内のもの。
出生証明書(子供と一緒に申請する場合)
子供の情報を含む戸籍謄本(原本と英語翻訳したもの)。発行から3ヶ月以内のもの。
健康申告書
申請人数分
指定のフォームへの記入とサラワク州現地の医者(*リモート申請の場合、日本の医者)による記入と署名が必要。
健康診断書
申請人数分(7歳以下の子供は不要)
指定の検査(血液検査、尿検査、胸部X線検査)の受診が必要です。
リモート申請も可能。
リモート申請とは、50歳以上の方で月収証明を経済的証明とする場合に限り、申請者本人が現地への渡航をせずに、申請手続きを行うことができる申請方法のことです。
S-MM2H 申請までの流れ
S-MM2Hの取得には、サラワク州に2回渡航する必要があります。
<渡航前>
オンラインで定期預金口座(FDA)を作成し、必要金額を海外送金。
<1回目(5日間以上)滞在>
FDAの手続き(本人確認や指紋登録など)
健康診断(血液検査、レントゲン、尿検査など一般検査)
→全ての必要書類を準備して、S-MM2Hの取得申請を行う。承認まで約2~4ヶ月必要。
<2回目(4日間以上滞在)>
S-MM2Hの申請が承認されると承認証が発行。
承認証発行から6ヶ月以内に渡航し、移民局にてビザを受領。
所要期間:1~2ヵ月
所要期間:2週間
所要期間:1ヵ月
所要期間:2~3ヵ月
所要期間:1週間
全ての手続きに問題なければビザ取得
ビザの申請時(本人のみ)と完了後の取得時(本人+帯同する対象者)がサラワク州へ行く必要があります。
S-MM2Hビザは5年間有効で、5年後に1回のみ更新ができます。最大10年になりますが、10年後にその時の条件に適合していれば、再申請は可能です。
他に、年間パス登録料として、RM90/年と初回ビザ手数料RM500が必要です。
セキュリティーボンド(デポジット)として1人あたりRM1,000必要です。
S-MM2HビザとMM2Hビザとの比較
S-MM2Hビザ | MM2Hビザ | |
年齢条件 | 30歳代、40歳代、50歳以上 | 35歳以上 |
滞在条件 | サラワク州に年間15日以上の滞在義務有り。 | 90日以上の滞在義務(50歳未満)有り。 |
特別条件 | 30歳代:子供がサラワク州で進学、または長期療養の必要あり40歳代:上記+サラワク州不動産にRM50万以上投資でも可。 | MM2H対象者総数が、マレーシア全人口の1%未満になるように制限。 |
財産証明 | 不要 | RM150万以上(約4,605万円) |
月収証明 | 夫婦:RM1万/月(約30.7万円)独身:RM7千/月(約21.5万円) | RM4万/月(約123万円) |
定期預金要件 | サラワク州の銀行で夫婦:RM30万(約921万円) 独身:RM15万(約460万円) | RM100万(約3,070万円)+RM5万(約154万円)/人 |
最低定期預金維持額 | 夫婦:RM18万(約553万円)独身:RM9万(約276万円) | 銀行により異なる |
定期預金引出条件 | サラワク州での不動産、車、子供学校、医療に関する必要費用 | 不動産取得、医療、教育目的で最大50パーセント引出可能 |
居住地 | マレーシア国内全土(サバ州以外) | サラワク州、サバ州以外のマレーシア国内全土 |
特別な滞在理由
S-MM2Hビザでは、50歳未満の場合、経済的証明のほかにサラワクへの投資条件やサラワクでの特別な滞在理由が求められます。MM2Hビザでは、マレーシアへの投資や滞在理由は求められません。
有効期間と更新条件
S-MM2Hビザの有効期間は5年、さらに追加で5年更新、トータル10年の滞在が可能です。ただし、更新には毎年15日以上のサラワク州滞在が必須条件となります。
MM2Hビザも有効期間5年、更新時は5年更新が可能です。
年齢条件
S-MM2Hビザは主に50歳以上が申請しやすいビザですが、30代、40代の方で、サラワク州で不動産購入や子供の教育移住を考えているという方も取得可能です。
30代の方は、子供の学校がサラワク州に限定されてしまうため、サラワク州に通わせたいインターナショナルスクールがある場合は適していますが、そうでなければあまりおすすめできません。
インターナショナルスクールに関しては、州都のクチンであれば4校あります。学費はクアラルンプールなどと比べるとかなり安いです。
経済的証明の比較
MM2HビザとS-MM2Hビザの比較対象となる最大のポイントは経済的証明です。
金銭的条件面では「S-MM2H」の方が、圧倒的にハードルが低いです。
「MM2H」は、財産、月収、定期預金のすべての条件を満たす必要がある(AND条件)
「S-MM2H」は、月収 or 定期預金のいずれかの条件を満たせばOK(OR条件)
まとめ
今回は、密かに注目されているサラワク州のS-MM2Hビザについて解説してきました。
MM2Hビザの新条件では取得が厳しい方も、S-MM2Hビザであれば条件を満たせるという方も多いのではないでしょうか。
特に50歳以上の方であれば、S-MM2Hビザはとても取得しやすく、従来のMM2Hビザの代替的役割を果たすことができます。
マレーシアへ移住の方法として、MM2HとS-MM2H(長期滞在ビザ)、マレーシア法人とラブアン法人設立による就労ビザ取得、お子様の入学に伴う学生ビザと保護者ビザの取得などの選択肢があります。
弊社FSIGMA(エフシグマ)では、マレーシアへの移住のサポートを行っております。マレーシア法人やラブアン法人の設立、ビザ取得、銀行口座開設、不動産などワンストップでサポートをしております。
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