海外資産の申告は必須!知っておくべき3つの税金に関するルール

目次

海外資産の申告で気をつけるべき国際税務

CRS

CRSとは
「Common Reporting Standard」の略です。日本だと「共通報告基準」というものになります。これは2014年にOECDが提唱した国際ルールです。

国際間の脱税取り締まり、そしてマネーロンダリングの防止がCRSの主な目的になります。

具体的に見ていくと「金融機関の口座情報を国同士で交換する」というルールが定められており、日本でも2018年から口座情報の交換を始めています。

CRSの仕組み【海外の口座情報が開示される訳とは】

例えば日本居住者がシンガポールの銀行に口座開設をしたとしましょう。

口座開設者が日本居住なので、この銀行はシンガポールの税務当局に対して、口座残高や名前、住所、納税番号などを報告します。

報告を受けたシンガポールの税務当局は、日本の国税庁に対して「この日本人がシンガポールのこの銀行に口座を持っています」という情報を送ることになっています。

日本の国税庁はこの情報を元に、日本居住者の税金逃れの監視をしている、そんな仕組みになっています。

この情報交換は基本的に毎年1月1日時点でのデータを年に1回、自動で交換するということになっています。

あくまでも自動交換が年に1回というだけで、例えば国税庁が「日本人のAさんがシンガポールに銀行口座を持っていて、税金逃れをしている可能性があるから詳しい情報を出してください」とシンガポール税務当局に申請すれば、追加で情報を出してくれます。

このようにCRSに参加している国同士では、互いの国に住んでいる居住者の口座情報の交換をしているので、非常に透明性の高い税務取り締まりが行えるようになります。

このCRS制度で交換される情報は、海外の銀行や証券会社、保険会社などの金融機関の口座情報です。信託や海外のトラストのスキームについても対象になっています。

海外のプライベートバンクも情報が開示される?

結論を言うと、CRS加盟国で匿名性のある口座を持つのは実質不可能であるということです。

例えばプライベートバンクで有名なスイスもCRSに加盟をしているので、スイスに財産を隠すのも現状では難しくなっています。

どんな情報が交換されているかは国税庁のウェブサイトに掲載されていますので、気になる方は見てみてください。
送信国や金融機関名、住所、口座情報、納税者番号、送金履歴や残高まで情報交換されています。

全て筒抜けになっていると思って良いでしょう

ちなみに世界全部の国がCRSに加盟しているわけではなく、100数カ国が参加をしています。

前述のスイスも以前はプライベートバンクが秘密を守ってくれるということで、富裕層がスイスのプライベートバンクにお金を預けて資産を隠していましたが、今ではスイスもCRSに加盟しているので、スイスにある口座情報も全て他の国に筒抜けです。

シンガポールや香港、イギリス領ヴァージン諸島といったタックスヘイブンも、このCRSに参加をしてきているので、これらの国に口座があっても全て日本当局に筒抜けになっています。

アメリカはCRSに参加していない

基本的にOECD加盟国、先進国はCRSに参加していますが、アメリカはCRSに参加していません。

アメリカは独自にFATCAという制度を設けて税務に対処しています。
これは日本語で言うと「外国口座税務コンプライアンス法」となり2013年に施行されました。

例えばアメリカ人、アメリカのグリーンカード保有者または居住者に関しては、全て海外からアメリカ当局に口座情報を送るようFATCAで義務付けており、これを了承している国は、必ずアメリカに情報を送っています。

アメリカは他の国と違い、国籍主義の税務処理をします。つまり「アメリカ人は世界のどこに住んでいたとしてもアメリカに税金を納めなさい」という制度です。

日本は基本的に居住地主義ですから、例えば日本国籍でもシンガポール居住者であれば、シンガポールで税金を納めれば、日本では納めなくていいというのが原則ですが、アメリカはアメリカ人なら世界のどこにいてもアメリカに税金を納めるということです。

FATCAの制度に関しては、例えば日本からアメリカへ、イギリスからアメリカへのように、基本的には海外からアメリカに向けて口座情報が送られるようになっており、逆方向はなく一方通行です。

つまり日本人がアメリカに口座を持っていても、その日本人の口座情報が日本の当局に自動で送られることはありません。

では日本人がアメリカに持っている口座情報は、日本の税務当局では把握できないのかというとそういうわけではなく、こちらは租税条約を結んで対処しています。

日米租税条約とは

日本とアメリカには「日米租税条約」があります。この条約に基づいて、日本人がアメリカに持っている口座情報を日本の税務当局が把握できます。

アメリカはCRSに参加していないので、日本の税務当局がアメリカの税務当局に「この人の口座情報をください」と依頼をしないと情報を送ってきませんが、基本的にはアメリカにある口座であっても日本当局は見ることができるので、注意が必要だということは知っておいてください。

CRSに参加していない国はどこ?情報開示はされないのか

なお、現状CRSに参加していない国はアメリカの他にフィリピンやカンボジア、ベトナムなどいくつかあります。

「フィリピンやカンボジアに銀行口座を持っていれば、日本で確定申告をしなくてもばれない」ということで、CRSに加盟してない国の銀行口座を使ってお金を隠している方がいますが、これには注意が必要です。

確かに今はCRSに加盟していませんが、将来的にはCRSに加盟する可能性は高いわけです。
世界的にもCRSに加盟をしよう、税金の透明性を高めようという動きが活発化しているので、現在参加してない国も将来的には加盟する可能性が高いと思ってください。

CRSに加盟すると過去に遡って口座情報を開示される可能性があります。

その結果、過去に脱税していたことがばれてしまいますから非常に注意が必要です。

世界的に逃税対策の強化や資金の透明性確保、マネーロンダリングの防止が図られているので、海外資産で得た利益についても絶対に日本で申告をしてください

海外資産の申告で気をつけるべき国際税務

【②租税条約】

CRSと併せて知っておかなければならないのが租税条約です。
租税条約というのは各国間で結ばれている税金に関する条約のことです。

二重課税の回避や脱税・租税回避への対応について書かれています。

二重課税とは
「一般的に、一の納税者に対して、一の課税期間において、一の課税要件事実、行為ないし課税物件を対象に、同種の租税を二度以上課すことを指すとされます。

この二重課税を回避するためには、海外で納めた税金と日本で納める税金の金額を調整する必要があります。

例えば日本では通常、所得に対して20%の課税がされます。
海外ですでに5%の源泉課税がされているので、その差額の15%を日本で納める。
こういった差額の計算をして処理をするケースが多いです。

租税条約は国同士で結ぶものですから、国によって内容が違います。
自分が関係のある国との租税条約についても調べておく必要があります。
海外資産の確定申告については、必ずお抱えの税理士に相談してください。

海外資産の申告で気をつけるべき国際税務

【③国外財産調書制度】

もう一つ合わせて知っておきたいのが「国外財産調書制度」です。
これは毎年12月31日時点の国外財産の合計金額が5,000万円を超えている場合、日本の税務署に海外資産の届け出を提出する必要があります。

預金、株や債券などの有価証券、保険金、貸付金、不動産、暗号通貨まで財産に含まれる点がポイントです。詳しくは国税庁のウェブサイトにも載っているので気になる方は見てみてください。

富裕層は海外に財産を持っているので、その取り締まりを強化するために2014年から始まったものです。実際に2019年には、国外財産調書制度による初の刑事告発がありました。これをしっかり申告をしないと捕まる可能性があるので、海外に財産をお持ちの方は注意してください。

なお、この調書の提出を促すために「過少申告加算税」「無申告加算税の特例」というものがあります。これには期限内に調書を提出した場合は、申告漏れがあって追加の税金を納めることになったとしても、安く済むというメリットがあります。

一方で、期限内に提出がされなかった場合は、後でその申告漏れが発覚したら税金を高く取られるというペナルティが発生します。

まとめ

海外に財産がある方は必ず申告をするようにしてください。
特にCRS制度によって海外の口座情報は基本的に筒抜けになっています。

調書精度では海外に財産があるという点が大事になりますが、例えば仮想通貨の場合は所在国がどこになるのかの判定が難しいこともあります。

各財産の所在判定基準については国税庁がホームページにアップしておりますので、ぜひそちらをご参照いただき、詳しくはお抱えの税理士に相談してください。

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